釣釜
通常、釜は炉の中に設置した五徳の上に乗せていますが、釣釜では五徳を取り除き、天井に打たれた蛭釘(ひるくぎ)から釜を釣り下げて使用します。
釣釜には、雲龍、車軸、鶴首といった細長い小さめのものを使用します。五徳に据え置いた釜と違って釣り下げている釜なので、点前中もゆらゆらと揺れて柄杓の扱いでは心もとない感もありますが、これが陽炎(かげろう)や風といった春の風情を表しています。三月に釣釜にするのには、この春の風情を楽しむことと、炉中に撒かれた灰が増える(実際は取り除いているが)炉の終わりゆく時期に思いを馳せる意味もあります。
釣釜は、広間と小間では室礼が異なります。広間では天井に打たれた蛭釘に“鎖”を、小間では竹や植物の蔓などで出来た”自在”を下げて、その先に釜をかけます。